名前のない伽藍配置様式の怪―“(仮称)信濃国分寺式伽藍配置”―
名前のない伽藍配置様式の怪
―“(仮称)信濃国分寺式伽藍配置”―[多元的「国分寺」研究]
先に、「東大寺式伽藍配置」の有耶無耶―どれが本当の東大寺式なのか?―(2021年11月16日(火)) で、説明❸による東大寺式伽藍配置図を紹介しました(次図)。
説明❸による「東大寺式伽藍配置」図
これが「東大寺式」だと東大寺は東大寺式ではないことになります。
実は、説明❸が「東大寺式」と言っているのは「国分寺式伽藍配置」なのです(次図)。
国分寺式伽藍配置図
国分寺式(『国分二寺図』式)伽藍配置の具体例(播磨国分寺の伽藍配置)
このように「東大寺式」とか「国分寺式」とか言っても、その伽藍配置はわからないのです。
もっとも奇妙なのは、次の伽藍配置の様式に名前がついていないのです。
「名前のない伽藍配置様式」が一意に定まる定義
南大門・中門・金堂・講堂・僧坊などは南から北へ中軸線上に並び(縦型寺院)、回廊は中門から出で金堂を囲って講堂の両妻に取りつく。塔は回廊の外で、中軸線の東に単塔(東塔)を、中門と南大門と間に配する。
この伽藍配置の具体例は「信濃国分寺(僧寺及び尼寺)」です(次図)。
信濃国分寺(僧寺・尼寺)の伽藍配置(Google Earth の航空写真を加工)
信濃国分寺は僧寺・尼寺がそろってこの様式(「金堂院型」=回廊は中門から出で金堂を囲って講堂の両妻に取りつく)であるため、名前がないので「(仮称)信濃国分寺式」と呼んでおこうと思います。
この伽藍配置の形式を「国分寺式」と称する考古学者もいるようです。
海老名市のHP「国指定史跡 史跡相模国分寺跡・尼寺跡」よりの抜粋です(強調・下線は山田による)。
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尼寺跡について
写真:尼寺〔写真省略〕
尼寺跡は、平成9年に国の史跡に指定されました。指定に関する確認調査を数回行い以下のようなことが分かっています。
伽藍配置
中央に金堂を配し、講堂・中門・回路(回廊)で囲む一般的な「国分寺式」と呼ばれるものです。〔後略〕
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金堂を中門・回廊・講堂で囲む形式は次図です。
金堂院型中枢伽藍(金堂を中門・回廊・講堂で囲む形式)
これが「一般的な「国分寺式」と呼ばれるもの 」だそうです。混乱の極みです。
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