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2023年1月14日 (土)

なんちゃって哲学―逆立ちした思想―

なんちゃって哲学
逆立ちした思想[なんちゃってシリーズ]

 ブログ記事 倭国一の寺院「元興寺」(3)―異論の検討(その2)―2023年1月12日(木) で、森郁夫氏が著書『一瓦一説』(P.140)の中で書かれた次の事柄について、思わず「ここに「元興寺」とあるのは、『続日本紀』の養老二年(七一八)五月十八日の「法興寺を新京に遷す」の記事によって誤りである」とどうして言えるのでしょうか(アタオカでしょう)。」と口走ってしまいました。
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大安寺の造営工事は、『続日本紀』に「始めて元興寺を左京六条四坊に徒し建つ」とある霊亀二年(七一六)であることがほぼ確実視されている。ここに「元興寺」とあるのは、『続日本紀』の養老二年(七一八)五月十八日の「法興寺を新京に遷す」の記事によって誤りであることが周知の事実となっている。
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 「アタオカ」というのは「頭(あたま)おかしい」の短縮スラングです(「アタオカ」と口走ってしまった理由は前掲ブログ記事をご覧ください)。記事をアップしてから読み直しているうちに、次のことが気になってきました。
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 森郁夫氏は次の経歴をもつ優秀な方だ。
國學院大學文学部史学科卒業。帝塚山大学教養学部教授、人文学部教授、1998年「日本古代寺院造営の研究」で國學院大歴史学博士、帝塚山大考古学研究所所長・附属博物館館長。2010年定年退任、名誉教授。Wikipedia「森郁夫 (考古学者)」より)
 「肩書」や「権威」で判断しているわけではなく、その著書や論文などを拝見していても頭脳の明晰さをうかがうことができる方です。なのに、その森郁夫氏をもってしても根拠のない原文改訂による通説(定説)を受け入れている。それは何故だろう。
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 そして、通説(定説)の誤りを論証するのに使った年表のマトリックスをなにげなく眺めていると、あることに気づきました。私は「元興寺」(太宰府にあったとする)を年表の列の項目にしていますが、通説(定説)を受け入れている方々はその列項目「元興寺」がない状態で考えているのだと。そう思って年表をみれば『続日本紀』の霊亀二年(七一六)に「「始めて元興寺を左京六条四坊に徒し建つ」とある「元興寺」は、「養老二年(七一八)五月十八日の「法興寺を新京に遷す」の記事によって誤りである」と考えるしかない(法興寺=元興寺と考えないと収拾がつかない)ことがわかりました。

 何のことはない。「一元史観」でものを考えているから解(わか)るものも解(わか)らなくなっていたのです。

 「一元史観」・「一元通念」というのは「論証されていないもの」です。すなわち「イデオロギー(ideology)」です。
 「イデオロギー」というものは「イデア(理想の姿)」から物事を見たり考えたりした結果生ずる観念・意識です。つまり、どんなに体系化されていようが「正しく認識した事実」を前提に思考(推論)してはいないものなのです。論理学で言えば真である前提に基づいていない推論の結果がイデオロギーです。

 前掲した通説(定説)は「一元通念」に基づいてものごとを見たり考えたりしている(「正しく認識した事実」を前提に思考(推論)していない)ので、それに合わない「事実」を目前にした場合に、「一元通念」の方を疑うのではなく「事実」の方を「間違っている」とする羽目になるわけです。 

 イデオロギー(観念形態・意識形態)とは一般に体系化された観念や信念のことを指し、おおまかには「思想(thought)」、つまりthink(思(おも)い、考(かんが)え、予想(よそう)した結果で現在も引き続き頭の中に抱いている観念や信念(現在完了形)と言えます。それを疑うのは難しいことかもしれませんね。

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