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2023年1月28日 (土)

なんちゃって哲学―「違いがわかる」だけでは―

なんちゃって哲学
「違いがわかる」だけでは[なんちゃってシリーズ][学問・資格]

 かつて「♪ダバダ~ダ~バ~ダバダ~♪」で始まる「違いがわかる男」というキャッチコピーで知られる「ネスカフェ ゴールドブレンド」のCMがありました。

 古賀達也の洛中洛外日記第2926話 2023/01/24 多元史観から見た藤原宮出土「富夲銭」 (2) に、阿部周一氏の「藤原宮」遺跡出土の「富本銭」について 「九州倭国王権」の貨幣として(2020年8月12日 古田史学会報159号 掲載)が要約されて紹介されています。少し長いですが引用します(文字の彩色太字化は山田による。改行は省略しています)。
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(1) 藤原宮大極殿跡出土の富夲銭は鋳上がりも良いとはいえず、線も繊細ではないし、それ以前に発見されていたものは「富」の字であったが、これが「冨」(ワ冠)になっている。
(2) 内画(中心の四角の部分を巡る内側区画)が大きいため、「冨」と「夲」がやや扁平になっており、「冨」の中の横棒がない。
(3) 七曜紋も粒が大きい。
(4) 飛鳥池出土富夲銭の銭文はほぼ左右対称になっているのに対して、藤原宮出土品の場合、「冨」の「ワ冠」がデフォルメされておらず非対称デザインとなっている。
(5) これら意匠は飛鳥池出土品(従来型)と比べて洗練されていないように見え、時期的に先行する可能性がある。この「冨」の字の「ワ冠」について、その書体が「撥ね形」(一画目も二画目も「止め」ではなく「撥ね」になっている)であり、それは主に隋代までの書体に頻出するもので、唐代に入ると急速に見られなくなるという古賀による指摘(注③)との関連を踏まえると、この富夲銭については製造時期が従来型よりかなり遡上するものと推定できる。
(6) 藤原宮出土富夲銭は飛鳥池出土品と同時期あるいはその後期の別の工房の製品とされているようだが、そのように仮定すると、鋳造所ごとに違うデザイン、違う原材料、違う重量であったこととなる。しかし、鋳造に国家的関与があれば、そのような状況は考えにくい。重量は銭貨にとって重要ファクターであり、同時代ならば同重量であるのが当然だからだ。両者の差異は、鋳造の時期と状況が異なることを推定させ、その場合、藤原宮出土の富夲銭は飛鳥池出土品に先行すると考えるのが妥当である。
(7) 地鎮具に封入されるものとして、特別なもの、あるいは希少なものが使用されるのはあり得ることであり、王権内部で代々秘蔵されていたものがここで使用されたと見ることも出来る。
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 これに対する古賀氏の論評が素晴らしく適切でした。次の部分です。
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この阿部稿の指摘の内、(1)~(4)は従来から言われてきたことですが、(5)~(7)が阿部さんによる新説です。なかでも、結論に相当する(7)の「王権内部で代々秘蔵されていたものがここで使用された」という指摘は卓見です。
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 私が何をもって「素晴らしく適切」と言ったのか。「(1)~(4)は従来から言われてきたこと」と指摘している部分です。この古賀氏の言葉から(1)(4)を読み直してみて、「違いがわかる」という冒頭のCMを思い出したのです。

あるものごとAとBが同じであることは「感性」さえあればわかります
あるものごとAとBの違いについては「悟性」を働かせさえすればわかります。 

 上記の従来から言われてきたこと(1)(4)は、備わっている「感性」「悟性」を働かせればできることです。しかし、そこ((1)(4))までなら「学問」の名に値しません。何故なら「何故?」という「問い」もなければ「答え」もないからです。

 「学問」とは「何故?」という「問い」を立ててその「答え」を「知性と「理性を使って追求するものだからです。

 古賀氏は阿部氏が(5)(6)(7)という「答え」を導き出したことを評価しています。特に(7)を「卓見」と評価されています。

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感性」「悟性」「知性」「理性」についてはsanmaoの「なんちゃって哲学」―わかりやすい?わかりにくい?に、1~2分で読める「(なんちゃって)解説」があります。

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