“高麗尺”と「令大尺」―「改新の詔」と「南朝大尺」―
“高麗尺”と「令大尺」
―「改新の詔」と「南朝大尺」―[論理の赴くところ][度量衡]
【末尾に唐大尺(隋開皇官尺)の場合を追加(2023/2/22)】
【誤計算していた「令大尺29.09㎝~29.70㎝の1.2倍の34.908㎝~34.884㎝」を「(奈良時代)令大尺29.39㎝~29.70㎝の1.2倍の35.273㎝~35.636㎝」に訂正しました。(2023/2/26) 】
服部静尚さんの「改新の詔は九州王朝が出した」旨のYouTube動画が公開されています。
服部静尚@大化の改新の真実①大化の改新とは~一元史観の見方@和泉市コミュニティセンター@和泉史談会@20230214@29:01@DSCN0737
服部静尚@大化の改新の真実②改新の詔には異なる畿内定義が有る@和泉市コミュニティセンター@和泉史談会@20230214@15:06@DSCN0738
服部静尚@大化の改新の真実③改新の詔は律令政治のはじめ@20230214@29:01@DSCN0740
服部静尚@大化の改新の真実④大化年間の詔の評価@20230214@28:39@DSCN0741
全部を拝見しておりませんが、その講演③の冒頭で度量衡の変遷について興味深い事実説明があり、仮説を思いつきましたので、述べてみたいと思います。
改新の詔で「田長30歩、廣12歩を段とする」(一段の面積360歩)とあり、大宝律令(701年)では「改めて段積250歩とする」とあり、和銅六年(713年)の格で「重ねて復た改めて360歩とする」とあります。
これは、三つは同じ面積であるが、度の単位を変更したことを言っているのだろうと思います。結局、和銅六年にはもとに戻したようです。
改新の詔:30歩×12歩=360歩
大宝律令:25歩×10歩=250歩(「25歩×10歩」は段積からの推定)
大宝令による「大尺」には次の二説があるようです。
❶“高麗尺”というものがあり、「令大尺」は“高麗尺”で、「令小尺」が「唐大尺」であった。
❷「令大尺」と「唐大尺」は同じで、その長さは曲尺の9寸6分~9寸8分で、奈良時代の物差し(正倉院蔵=“天平尺”)は曲尺の9寸7分~9寸8分。
“高麗尺”は無かったので、❷によると、大尺は29.09㎝~29.70㎝となります(曲尺は1000/33㎝)。奈良時代は29.39㎝~29.70㎝となります。
なぜこのような、とてつもない異説(❶)がでるのでしょうか?
この二説を統合する仮説として、南朝にも「大尺」(仮称「南朝大尺」)が存在した、という仮説を提唱したいと思います(「南朝大尺」との命名は古賀達也氏による)。
つまり、正始弩尺24.3㎝にはその1.2倍の「(仮称)正始大尺」29.16㎝が、晋後尺24.5㎝にはその1.2倍の「(仮称)晋後大尺」29.4㎝が存在した、という仮説です。
この仮説によれば、一歩(いちぶ)は大尺五尺ですので、「正始大尺」なら一歩は1.458m、「晋後大尺」なら一歩は1.47mですので、改新の詔の360歩(=30歩×12歩)は次のようになります。
【「正始大尺」29.16㎝の場合】
30歩(1.458m×30)×12歩(1.458m×12)=765.27504㎡
【「晋後大尺」29.4㎝の場合】
30歩(1.47m×30)×12歩(1.47mm×12)=777.92400㎡ (『大尺』=29.63㎝×1.2=35.556㎝、『大尺』 五尺=1.7778m)
また、大宝律令はこれを25歩×10歩としている(推定)のですから、「大宝一歩」は「改新一歩」の1.2倍でなければ同じ面積になりません。つまり、「一歩=『大尺』五尺」を守るならばこの『大尺』はいわゆる「唐大尺」=(奈良時代)令大尺29.39㎝~29.70㎝の1.2倍の35.273㎝~35.636㎝になります( “高麗尺”はこれを誤認したことになります)。つまり、「一歩=大尺六尺」を「一歩『大尺』五尺」に変更した(「30歩×12歩=360歩」を「25歩×10歩=250歩」に変更した)ために、この『大尺』を“高麗尺”という寸法単位の尺度と誤認したのが❶説と考えられます(この『大尺』は寸法「尺」度ではなく「里」程の単位)。これによって統一的であった「尺」が寸法の度「大尺」と里程の度『大尺』に分裂してしまったと思われます(これは不都合でしょう)。なので、のちに元通りに戻されたのだと思われます。
【唐大尺(隋開皇官尺 )29.63㎝の場合】(2023/02/22追加)
30歩(1.4815m×30)×12歩(1.4815mm×12)=790.14321㎡
25歩(1.4815m×1.2×25 )×10歩(1.4815m ×1.2×10)=790.14321㎡
(『大尺』35.556㎝ (=29.63㎝×1.2)、『一歩 』=『大尺』 五尺=1.7778m、この『一歩 』 が「一間」(「大尺」六尺に相当)。
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